咳やくしゃみで腰に響いたら…

腰痛でいらした患者さんには必ず聞くことがあります。それはせきやくしゃみをした時に腰に響くかどうかです。これは何を診ているかというと、腰椎椎間板ヘルニア(椎間板症)が起きていると咳くしゃみで腰に響く事が多いです。中には咳くしゃみ自体しないのでわからない方もいらっしゃいますが、問診時のポイントになります。

因みに腰椎とは背骨の腰の部分、椎間板とは背骨と背骨の間のクッション、ヘルニアとは“飛び出す”という意味です。他にも、鼠径ヘルニアや脳ヘルニアなどがありますが、数自体が多いので一般にヘルニアと言うと腰椎椎間板ヘルニアの事を指すことが多いです。

椎間板の構造は周りを取り巻く繊維輪と中の髄核から形成されます。繊維輪は15枚ほどあり、外側の2,3枚には神経(脊髄洞神経)が分布し、中から髄核が押し出してここを刺激されると神経症状(感覚、運動の異常など)が現れます。

例えばせきやくしゃみ、笑った時などに突然筋群が緊張すると椎間板への圧力が増え水分の放出が進みます。出てきた髄核が神経(脊髄神経、脊髄洞神経、馬尾神経)を刺激すると腰に響いたり、中には放散痛といって臀部や足の方へ広がる人もいらっしゃいます。

椎間板は周辺組織との間で水分のやり取り行っており、水分が出たり入ったりしています。またある値(800N)が境となっています。

咳やくしゃみは1400N笑うのは1500N腹筋は2100Nの圧力が椎間板にかかります。意外ですがデスクワークなどで座っている姿勢も1400Nです。ですので、問診時に仕事内容を聞くのも重要なポイントになります。

寝ている姿勢は250Nですので夜寝ている間に椎間板に水分が吸収され、朝起きようと腹筋に力がかかると一気に圧力が高まり具合が悪くなるのも椎間板障害の特徴です。

※因みに椎間板障害由来のぎっくり腰が起こると朝顔を洗おうとした時やズボンを履こうとした際になるなど、何をしたわけでもなく起きます。以前働いていた吉祥寺の接骨院はぎっくり腰の方が多く来院されていましたが10人いたら7人位はこのタイプでした。そもそもの数が多いですので、これを読まれている方の中にも同じ様な経験をされた方がいらっしゃるかと思います。

当院では初回の問診と検査を丁寧に行う事を心掛けています。腰痛といっても様々な原因があり、中には複合している方もいらっしゃいます。例えば、脊柱管狭窄症があって古傷だった椎間板ヘルニアが悪化したご高齢の方腰椎すべり症があって椎間板に斜め方向の力が長期間加わり亀裂が入ってしまった運動選手出産で仙腸関節(骨盤)が緩んでいる時に赤ちゃんの抱っこで前かがみが多く椎間板に障害がででしまった方などです。

当然原因により治療法が異なってきますし、コンビネーションの場合は折衷案で治療しなければいけないこともあります。同じ方でも以前とは状況が異なっている事がありますので、過去の情報から今回もと決めつけて診断がおろそかにならない様にも気を付けています。