肩の特有なバイオメカニクス

肩関節の特徴的なバイオメカニクスとして上腕骨の引き下げウィンギングがあります。これらは手を横から上に上げる動作(外転時)に働きますので、検査も同様に手を上げてもらい耳まで付くかを診ます。この時、どの角度で止まるあるいは痛みが出るかで原因が変わってきます。


上腕骨の引き下げ

肩を外転すると0度から60度までは上腕骨頭が関節窩を上方に3mm移動します。その後、いわゆるインナーマッスルと呼ばれる大円筋肩甲下筋などにより上腕骨が引き下げられます。これにより肩甲骨の肩峰と上腕骨の挟み込み(インピンジメント症候群)が避けられます。大円筋と肩甲下筋は内旋筋と呼ばれ肩を内側にひねる筋肉です。野球の投球動作バレーボールのスパイクテニスやバドミントンのスマッシュなどの最後にストップをかける(伸張性収縮といい筋肉への負担は高くなります)為、これらの内旋筋に負担がかかり過緊張を起こすことがあり、結果として上腕骨の引き下げが妨げられインピンジメント症候群を起こすことがあります。これに対しての治療は筋の過緊張をとる事が目的となりますので、超音波・鍼を行いさらにアクティブリリースという筋膜リリースを行い可動域を上げていきます。

※インピンジメント症候群で挟まれるものは、棘上筋上腕二頭筋長頭腱肩峰下滑液胞の三つです。最初はインピンジメントでも長患いすると継続的にこれらが挟まれる為腱板損傷へ移行する可能性があります。治療法が少し変わるのでまずは理学検査で判別します。

 

ウィンギング

肩関節外転の90度以降、そのままだと肩峰と上腕骨の大結節という出っ張りの部分が当たってしまいます。これを当たらない様に鎖骨が胸骨との関節面で沈み込み、後方に転がるメカニズムがありこれをウィンギングといいます。ウィンギングが働かなくなる原因として胸鎖関節で鎖骨が上に上がりっぱなし(下がりっぱなしの事もあります)と、後方への転がりを行う鎖骨下筋の緊張があります。鎖骨の位置異常は鎖骨に指を置きながら肩を外転してもらい90度を超えた所で沈み込みと転がりがあるかを診て、異常があればそれを正す方向へアクティベーターを使って安全に調整します。(肩を調整する時に強い力を加えすぎると、関節唇という関節の安定性を高める軟骨を痛める可能性があるので注意します。)鎖骨下筋の過緊張がある場合には鍼や電気はできない場所なので筋肉を手で緩めていきます。

※外転は真横ではなくやや前から上げます。これは肩甲骨が体幹に対して約30度角度を付けて付着している為です。これをスキャプラアングル(プレーン)と言います。真横からだと伸展という動作も入ってしまいます。

リハビリ時にはこの点に注意して行います。